2002.9.16 4日目 Interlaken移動

  本日はピラトゥス山、ロートホルン山と観光してから、インターラーケンに移動する。
 移動距離自体は大したこと無いのだが、2つの山に上るため余り時間に余裕はない。

 最初の目的地ピラトゥス山へ上がる一番列車に間に合わせるには、ルツェルンを7時に出る列車に乗らなければならない。
 まあ早起きは慣れっこ子なので問題ないけど、6時台に表に出るとまだ外は真っ暗だ。
 ホテルの朝食は7時からなので、当然食べることができず、駅の売店でサンドウィッチを買ってから列車に乗り込む。
 ピラトゥス山への入口アルプナハシュタットまではスイス国鉄のブリューニック線で20分位だから大した距離ではない。
 このブリューニック線はスイス国鉄で唯一の狭軌線で軌間はぴったり1m。
 何となくJRの在来線に寸法が近いせいか、見慣れた感じの線路という気がしないでもない。
 列車で20分の道のりなのでアルプナハシュタットまではすくそこだが、到着してもすぐ登山電車が出発するわけではないので、駅前で時間を潰すことにする。
 駅に到着すると、何人かはまっすぐ登山鉄道の駅に直行し、さっさと列車に乗り込んだようだ。
 まだ始発の出発時刻まで50分近くあるはずなのにと思っていると、電車がスルスルと上っていってしまった。
 駅の時刻表でも始発は8時10分と私が予定していた列車しか無いようだが?
 ひょっとしたら山の上の売店とか従業員専用だったのかも?と勝手に納得する。

 さて今日は全ての荷物を持って移動しているため、カメラ以外はコインロッカーに放り込んで行きたいのだが、どうもこの駅にはコインロッカーとか一時預かりが無いらしい。
 仕方ないので、全装備を担いで上がるしかないが、これでは行動に制限が掛かるかもしれない。
 まだ発車まで時間はあるが駅の窓口はやっているようなので、往復券を購入。
 この路線はスイスパスの範囲外なのだが、パスを見せると25%引きになるので、これは利用しない手はないでしょう。

ピラトゥス鉄道乗車
 豆知識
 開通は1889年
 最大勾配480パーミル(自力で車両が動く鉄道としては世界最高)
 ラックレールは世界で唯一のロッヒャー式

 8時過ぎに改札が始まり、列車に乗り込むが流石にこんな朝早くから上る人は少ないみたいで、乗客は私を含めて3人だけ。
 車内は階段状になっており、8人掛けのボックス席の1つ1つに扉が付くので、車内の移動はできないようだ。
 まあ、みんなバラバラに乗ったので、両側の車窓を眺められるのはラッキーかな。
 出発してすぐにもの凄い勢いで高度を上げて行くが、しばらくは森の中を進むのと雲が多いためか車窓は今一歩と言った感じだ。
 ただ高度の上がり方が早いため、すぐに雲を抜けると昨日と同様青空が広がり、遠くアルプの山々が見渡せる。
 太陽がまだ低い位置にあるせいか、光線の具合でとても神々しく見えて感動ものだ。

 途中トンネルをいくつか抜けるが、どれも素堀のままで荒々しい印象を受ける。
 そうこうしているうちに森林限界を越えて、草も生えない岩山の絶壁をよじ登るようになる。
 よくこんな所に線路を引いたと感心するが、高所恐怖症の人にはちょっと恐ろしい光景かもしれない。
 ただ私にとっては下手な遊園地のアトラクションよりよっぽど面白いけどね。 

 ここの鉄道は勾配が急すぎるため、普通の鉄道のように砂利の上に枕木を並べる方法では崩れてしまって危ないので、石積みの上に枕木を固定し、さらに枕木を地中にアンカーで固定している辺りが技術的には興味深い。
 ラックレールも絶対はずれないように両側から抱え込む方式を採用しているのだが、おかげで分岐器は大がかりな仕掛けが必要となったようだ。
 普通の方式では対応出来ず、進路ごとに線路がスライドして進行方向を決める方式がとられている。


ピラトゥス山観光
 約30分の乗車で山頂に到着、朝一の列車で上がったので、山頂にはほとんど人がおらず貸し切り状態だ。
 遠くにはアイガー、メンヒ、ユングフラウの山々が見えるし、今までに見たことのない雄大な風景の広がりにしばし我を忘れて見とれてしまう。
 とりあえず岩山に沿って遊歩道があるようなので、ちょっとだけ行ってみることにするが、荷物が重いので余り遠くまで行かないようにしよう。
 しばらく線路の見える場所で登ってくる電車を撮った後、2つある頂上のうち低い方のトムリスホルンの周囲を散策し、テラスでお茶をしながらまた景色に見入るが、何となくすごい贅沢をしている気分になるねぇ。

 テラスで休憩していると、すぐそばにカラスに似たくちばしの黄色い鳥がやってきた。
 結構人に慣れているみたいだな、手が届きそうな場所まで寄ってきて餌をねだっているようだが、残念ながらあげられる物が無いので、写真だけ撮らせてもらってご褒美は無しだ。
 そのうち餌がもらえないと悟ったのか他の客の所に行ってしまった。

 最後にトムリスホルンの頂上まで上がってみるが荷物が重いのでちょっときつい。
 高い方の頂上エーゼル峰まで上がるのは無理っぽいのでさっさとあきらめることにしよう。
 10時50分の電車で下山することにするが、この電車も乗客が少なく3人しかいない。
 私が登った後には電車が3本数珠つなぎになって上がって来ていたので、それなりに山頂に人はいるのだが、ほとんどの人はハイキングに行ったりしているので、電車で下山する人は少ないのかもしれない。

 下山の電車はパンタグラフを畳んで、モーターを発電器として使用し、位置エネルギーを抵抗器で熱エネルギーに変換しながらゆっくりと降りていく。
 この方式だとブレーキが焼き切れることが無いので安全なのだが、完全に停車まではできないので最後は運転手さんがハンドブレーキをギリギリと巻いて停車させている。
 速度は下りの方が安全のため遅くなるので、登りは30分だが下りは40分掛かる。
 麓のアルプナハシュタットに到着すると、向かいの国鉄駅には列車が停車している。
 時刻表を見た限りではこちらの到着前に出発するようであったが、対向列車が遅れているため出発できずに待っていたらしい。

 駅前をダッシュして何とか列車に飛び乗ることができたが、このおかげで今後の予定がずいぶん楽になる。
本来ならアルプナハシュタットで1時間近く待ち時間がある予定だったが、次の目的地ブリエンツに早く着ければ、ロートホルンでの滞在時間をのばすことができそうだ。
 車内は1等車のせいか他に乗客はいない、ちょっと走って暑かったので窓を全開にさせてもらおう。
 1等車では他に乗客がいるとちょっとあけずらいので、ちょうど良かった。
 列車は湖沿いを快調に飛ばすが、以外と線路と湖の間に立木が多くて写真が撮れない。
 そうこうしているうちに、この列車の終点ギスウィルに到着。
 ここで後続の急行列車に乗り換えないと行けない。
 待ち時間は20分ほどなので、駅のベンチでボケーッとして過ごす。

 しばしの待ち時間の後、急行に乗車すると幸運なことにこの列車も車内に他の乗客がいない。
 思いっきり窓を開けて写真を撮らせてもらうことにしよう。
 列車は快調に飛ばすが、途中やけに速度を落としたなと思ったら急勾配用ラックレールのエントランスの部分だったようだ。
 ピラトゥスの登山鉄道を見た直後だから、一瞬大した勾配に見えなかったが、まじまじと見てみるととんでもない坂のようだ。
 ラックレールの区間ではそれほど速度を上げないかと思ったらその認識は大間違いで、かなりの速度で突っ走る。
 その分機関車の床下からは、ギヤとラックレールの噛み合う音がかなりの大きさで響いてきており迫力満点だ。

 この路線は、最近「世界の車窓から」で放送されたばかりで、テレビで見た風景がそのまま展開される。
 途中、何度かラックレールの区間が現れたり、途切れたりしながらブリューニック峠のハスリベルクを目指す。
 峠を越えると一転して下り坂になるのだが、流石に登りの時のように速度をあげることもなく、ソロリソロリと降りていく。
 
 目的地ブリエンツまで後少しのマイリンゲンで進行方向を転換するため、しばらく停車。
 ここで日本からいらしたご夫婦に声を掛けていただき、しばらくご一緒させてもらう。
 今回はまだ出発してから4日ほどなので日本語が恋しいと言うほどでは無いが、たまに話すと少しほっとする。
 このご夫婦結構スイス旅行の上級者のようで、毎年スイスに来ているとのこと。
 ハイキングにもよく行くらしく、ポットにお湯を入れていつも持ち歩いているようで、コーヒーを入れていただき、ご馳走になってしまった。
 確かに小さいポットをもって歩くと便利かもしれないな、私も真似したいところだがもともとよけいな荷物が多いのでちょっと難しいかも。
 私の目的地まで15分ほどご一緒して、グリンデンワルトに向かうお二人とブリエンツの駅で手を振って別れる。

 さてブリエンツに着いたならまずSL!と行きたいところだが、列車の発車時間まで50分あるので、荷物をコインロッカーに放り込んでから、駅前のレストランで昼食しよう。
 よく考えたら、4日目にしてちゃんとした食事を初めて取るような気がするが、いつも時差ボケの関係か食欲不振になるのでしょうがない。
 さて、とりあえず英語のメニューを貰って前菜はトマトスープで決定、メインは鳥にしようかと思ったらちゃんと産地が書いてあり中国産だった。
何でこんなところで中国産なの?と思いつつ、変な飼料でも使っているのでは?との疑念も浮かぶ。(←圧倒的偏見)
 スイスの鳥は日本みたいなブロイラーでは無く、地鶏ばかりだと聞いたので無理に中国産の鳥を食べたくないし、今回はランプステーキにしておこう。
 ちょっと時間がギリギリなのでちょっとあわてて食べると、登山鉄道の駅に向かう。

ロートホルン鉄道乗車

豆知識 開業は1892年
 SLが売りの鉄道で大部分の列車がSLで運行されるが、少数のディーゼル機関車も使用される。
この鉄道がある限りスイスの鉄道は100%電化が達成できないと言われてる。 
最大勾配250パーミル。

 駅には結構な人が列車を待っており、乗客が20人以下の場合は運休になるという悪夢は回避されたようだ。
 そのうち列車が入線してきたが、SLが売りのこの鉄道では稀少で、ある意味当たりともいえるディーゼル機関車が牽引してきた。
 何でここで数少ない当たりを引くかな〜?
 とりあえず下りの時にはSLに当たることを期待して乗車するしかないか、、、、
 列車は8割の乗車率で余り空席が無いが、何とか窓際の席を確保できて一安心。
 発車するとピラトゥスにはかなわないが、こちらも結構な勾配で山を登り始め。
 しばらくはちょっとした住宅街の間を縫って行くが、その後の森林地帯に入ると余り見通しが利かないようだ。
 途中下山の列車と交換しながら約30分ほど乗車していると森林限界を越えたようで木が無くなり、遠くまで見通しが利くようになるとまたアルプスの山々を望む事ができるようになってきた。
 頂上が見え始め、最後の列車交換で信号場に停車していると、SLが2列車連ねて下りてくる。
 1本目の列車が私の乗っている列車の脇を通過しようかと言うときに、「ゴトン、ゴゴゴ、、、」とすごい音が、、、、
 転轍機を操作していたこちらの列車の車掌が「Holtー!(とまれー!)」と叫んでいる。
 一体何事?と思うが説明もないし、対向列車の2本目は信号場の手前で止まってしまっている。
 あの列車がどかないと先に進めないが、どうなってんだろ?
 5分ほど経過したころ何人かの乗客が列車を下りていくので、こちらも後に続くことにする。
 信号場の外で止まっている列車が動かなければ、こちらは動かないから大丈夫だろう。
 外に出ると、1本目の対向列車の乗客は全て降りているし、何か様子がおかしい。
 どうも列車の一角に人が集まっているようなので野次馬根性丸出しで行ってみると、なんと客車が脱線しているではないか。
 さっきの音はこの脱線の物だったのかと納得するが、ここで身動きできなくなるとちょっと困るな。
 周りの人は別に心配している様子もないし、珍しい物が見れたようでみんな盛んに写真を撮ったり、のぞきこんだりしている。
 そのうち車掌が現場から乗客を遠ざけると、ジャッキと古枕木を使って復旧作業を開始しだした。
 ただ、私の疑問は何でそんな機材が列車に常備されているのかの一点に集中する。
 やたら復旧作業が手慣れているようにも見えるし、ひょっとしてここでよく脱線しているのでは?という疑惑が、、、、
 復旧作業は30分ほどで完了し、さあ出発となったのだが脱線した客車は特に整備するわけでもなく、そのまま運転続行するようだ。
 ここで先ほどの疑問は確信に変わったが、何かとんでもないところに来たのかもしれないなとちょっと先行き不安になる。  
 ちょっとした?トラブルでロートホルン山頂に到着するのが遅れたが、珍しい物が見れたのでまあ良いか。
 駅から山頂までは歩いて10分ほど、眼下にはブリエンツ湖が広がり、ピラトゥス山ではかなり遠かったユングフラウの近辺がはっきりと望める。
 山頂でしばし景色を眺めるが、あまりに雄大な景色になんと表現していいか分からない。
 20分ほど景色を眺めるが、ちょっと喉が乾いてきたので、駅へ向かう途中のテラスでちょっとコーヒーブレイク。
 テラスからは斜面を上がってくる列車がよく見えるので、帰りの列車ががあえぎながら、登ってくるところを写真に納めながらしばし休憩。
 ただ、SLのブラストはリギ山の時と同じで勇ましいのだが、上から見てるとちっとも列車が進んでないみたい。
 5時前の列車で下山するが、今度は待望のSLだ。
 ここでまたディーゼルだったら1本後の最終列車にしようかと思ったけど、杞憂だったみたい。。
 何となく景色がすばらしかったので下山するのが名残惜しいが、次の列車がSLの保証は無いのであきらめて下山しよう。
 麓のブリエンツに着くまで1時間強で、下山するともうだいぶ日が傾きだした。
 後はブリューニック線で、インターラーケンオストまで移動すれば、本日の予定は終了だ。  
 ブリエンツからインターラーケンオストまでは20分ほど、裏寂れた感じの駅の北側にあるホテルが今夜の宿だ。
 
 チェックインして部屋に入るとちょっと狭い部屋だが、それに輪を掛けてベッドが小さい。
 去年のドイツのホテルを彷彿とさせるが、1泊だからまあ良いか、、、

 完全に日が暮れた、8時頃食事に出るがオスト(東)駅の前では、やっている店はないようだ。
 街の中心はヴェスト(西)駅よりなので、大通りを西に向かって歩いていく。
 しばらく歩くとちょっとした繁華街となり、その中のレストランで夕食にしよう。
 今回は昼に食べなかった鳥にしとこ。


 食後は途中の土産物屋で自分用の時計を買い、ホテルに戻ると10時過ぎだった。
 ここのところやけに早く寝てばかりだったが、少しはこちらの時間に慣れてきたかな。

 明日はユングフラウを回ってから、ツェルマットに移動だ。 
 ひょっとすると寝坊するかもしれないから、荷物の整理をしておかないと、、、、