2015年 9月18日 シベリア鉄道乗車5日目


移動区間 ベース図面出典 Wikitrave

 本日の起床は3時(現地時間7時)頃。
 天気はいいが沿線はかなり気温が低いようで、霜が降りている。
 架線の設備を見ていると、碍子類が簡素になっているので、直流区間に入ったようだ。
 恐らく昨夜の内に停車したМАРИИНСК(マイリンンスク)で機関車を交換しているはずだ。
 
 クラスノヤルスクで乗車した女性が洗面所に行っている間にベッドを片付けて座席に換えておく。
 戻ってきた女性が着替えるのかもしれないと思い、聞いてみるとその通りのようなのでしばし廊下に出て風景を眺めて過ごす。

 着替えが終わった女性は荷物もまとめ終わっており、もうすぐ到着するТАЙГА(タイガ)で下車するのかもしれない。


ТАЙГА(タイガ) モスクワ起点 3532km (営業キロ)

 ТАЙГА(タイガ)には定刻の3:34(現地時刻7:34)に到着。
 西行きロシア号最後の短時間停車駅となり、この後は停車駅数はグッと少なくなるものの、全て10分以上停車する長時間停車駅となる。
 同室の女性もここで下車していくが、息が白いので大分寒そうだ。
 本来シベリア鉄道の利用方法は私のように全線を通して乗車するのではなく、このような区間利用が一般的なのだろう。
 
 ТАЙГА(タイガ)を出発するとナディア車掌が部屋のベッドを片付けにやってくる。
 最混雑区間を区間を抜けたのか、なにやら機嫌が良さそうである。
 ナディア車掌からは1部屋貸し切りだよとみたいなことを言われたので、この後は同室の人は来ないのかもしれない。
 降りた乗客のシーツを片付けて、新しいシーツをセットしていくがさすがに手際がいい。
 最後は枕カバーを換えて通路側の荷物棚に枕を収納するのだが、背が届かないようで代わり入れるようにに頼まれた。
 まあそれくらいはお安い御用なので、枕を受け取り収納する。
 部屋の掃除が完了するとナディア車掌も一仕事終わったようで、鼻歌でも出てきそうな雰囲気で車掌室に戻って行く。

 車掌さんの車内整理も終わり落ち着いてきたところで、朝食にさせてもらうが、一人っきりになると意外と部屋が広く感じる。
 列車の方は緩やかな起伏が続く地形を快調に飛ばしていく。
 どうもイルクーツクより東の区間はかなり山がちな地形のため余り速度も出なかったようだが、ここら当たりからは線路も比較的真っ直ぐになのかそれなりに速度が上がってきており、あんまり減速するようなこともなくなった。
 途中渡ったトミ川では気温が低いのか、川から霧が発生し、しばらくは見通しが悪い中を進んでいくこととなる。

 この辺りでタイムゾーンが変更になるため、時差を確認する。
 モスクワ時間+3hとなり、だんだん時差が縮んでいくが、なかなか体内時計の方はピッタリと合わないようだ。

ТАЙГА(タイガ)手前

ТАЙГА(タイガ)駅

朝食

沿線風景

トミ川

霧が深いトミ川周辺

НОВОСИБИРС(ノボシビルスク) モスクワ起点 3303km (営業キロ)

 次の停車駅はНОВОСИБИРС(ノボシビルスク)でТАЙГА(タイガ)から約3時間の6:40(現地時間9:40)に5分早着で到着。
 この辺りでは大都会となるので、駅の手前からしばらくは大きなビルが建ち並ぶ市街地を通過する。
 表に出てみると構内の温度表示は7度となっているが風が無いので寒くはない。
 早速機関車を確認に行くと、比較的新しいデザインのЭП2К(EP2K)が先頭に立っていた。
 運転席の側面にはБАРАБИНСК(バラビンスク)書かれているので、恐らく次の停車駅БАРАБИНСК(バラビンスク)所属の機関車なのだろう。
 ひょっとすると次の駅で機関車を交換するのかもしれない。

 機関車の記録も終わり、駅前に出てみるかと思ったら、直接外に出られそうな跨線橋は封鎖されているようで、駅舎に通じる跨線橋を使用しないと外には出られ無さそうだ。
 荷物検査があるだろうから、あきらめてホーム内だけにする。
 その内対向列車が入線してきたので、機関車の写真を撮ったら機関士からなにやら言われた。
 文句を言っているのかもしれないが、何を言っているのかは全く分からないので適当に退散することにする。
 あとは構内でベリーの紅茶を1本(180ルーブル)購入してから列車に戻り発車を待つ。
 
 発車するとすぐにオビ川を渡るが、なぜか橋の区間だけ単線となっていた。
 結構川幅が広くて大きな川のようだ。
 

НОВОСИБИРС(ノボシビルスク)駅付近

НОВОСИБИРС(ノボシビルスク)駅に停車中のロシア号
機関車はЭП2К(EP2K)型

НОВОСИБИРС(ノボシビルスク)駅

НОВОСИБИРС(ノボシビルスク)駅駅舎

НОВОСИБИРС(ノボシビルスク)駅

オビ川

昼食

 НОВОСИБИРС(ノボシビルスク)を出ると次のБАРАБИНСК(バラビンスク)までは約3時間。
 この頃になると喉が痛くなってきたので、風邪を引いてしまったようだ。
 車内が乾燥しているので、喉がやられるかもと思ったが、このまま寝込むようなことになるとやっかいだ。
 とりあえず早めの昼食にして、食後に風邪薬を服用して休んでいくことにしよう。
 この日の昼食は日本から持ち込んだカップヌードルのカレー味で済ます。

 食後は横になって休んでいき、次のБАРАБИНСК(バラビンスク)手前で動き出す。


 БАРАБИНСК(バラビンスク)
 モスクワ起点 3000km(営業キロ)


 БАРАБИНСК(バラビンスク)には3分早着の10:11(現地時間 13:11)に到着。
 気温は9度との事だが、日差しが有るうえ風が無いので、かなり暖かく感じる。
 駅構内には物売りが多く、魚の燻製やピロシキ、毛皮の帽子売りなどが結構いる。
 ナディア車掌は魚の燻製を指さして美味いようなことを言っているが、臭いがきつそうなのでちょっと遠慮する。
 機関車を交換するかと思ったが、特に動きはなくそのまま牽引していくようだ。
 駅の西側には機関区が有り、それなりに機関車がたむろしていた。
 その手前には最近まで活躍していたと思われる、チェコ製のЧС2(ChS2)型機関車が保存されており、それとは別に駅の東側に広場があり、そちらにはSLが展示されている。
 駅前はぱっとしない感じなので、鉄道の拠点で大きな都市では無さそうだ。
 駅前広場からホームに戻ろうとすると物売りの老婆が警官に捕まってなにやら言っているが、雰囲気としては「哀れな老人になんて無慈悲な」みたいなことを言っているようだ。
 もっとも警官も若そうだが、泣き落としには全く動じる様子は無さそう。

 構内では汚物の回収車が忙しく動き回り、打音検査も実施されている。
 久し振りに暖かく感じてきたので構内のKIOSKでアイスを購入。
 ここのところいろいろと仲良くなったナディア車掌にも差し入れでアイスを渡すと、結構喜んでくれた。
 
 発車後に構内に旧型流線型のエレクトリーチカが停車しているのを発見。
 速度が遅かったので何とか写真に写すことが出来た。
 出来れば窓ガラス越しにではなく直接撮りたかったが、生きている旧型の写真を取れただけでも満足しないと行けない。

 駅を出てすぐにナディア車掌がちょっと心配そうな雰囲気で部屋に訪ねてきた。
 何を言っているのか分からないので困っていると手招きするのでついて行ってみたところ、隣の3号室5番ベッドを指さしている。
 ここはウラジオストクから乗っている日本人らしき男性のベッドだが、意外と車内で顔を合わすことが無く話をしたこともなかった。
 ここで車掌さんの言っている意味が理解でき、バラビンスクで乗り遅れたのではないかと心配しているのだ。
 電話のジェスチャーをされるが知らないので、無理無理とジェスチャーするがどうしようもない。
 同室のご婦人も心配そうだが、駅での彼の行動を思い返すと結構時間とか分かって動いているように見えたので乗り遅れたとは考えにくいな。
 3名でどうした物かと困っていると、たまたま食堂車のスタッフが通りかかったので、車掌さんが知らないか聞いてみると、食堂車にいることが判明。
 乗り遅れが出ると責任問題になるのか、車掌さんも心底ほっとしたような感じだ。

БАРАБИНСК(バラビンスク)駅舎

БАРАБИНСК(バラビンスク)構内
汚物抜き取り中

БАРАБИНСК(バラビンスク)駅構内

チェコ製のЧС2(ChS2)型保存機

БАРАБИНСК(バラビンスク)駅停車中のロシア号

駅前の保存SL

БАРАБИНСК(バラビンスク)駅前

旧型流線形のエレクトリーチカ

 БАРАБИНСК(バラビンスク)を出発すると次の停車駅はОМСК-ПАСС(オムスク−パス)で到着は4時間後だ。
 天気の方がいいので車内は暑いくらいになってきた。
 しばらすると3000kmのキロポストなので撮影に備えるが、ちょっとした勘違いをして1km間違えたため撮影に失敗して通過してしまった。
 
 車掌室を訪ね、廊下に飾ってあったロシア鉄道のマスコットのぬいぐるみ(小)を自分用に購入。(280ルーブル)
 この頃から風邪薬が効いてきたらしく、しばし仮眠を取る。
 1時間半ほど仮眠を取るが相変わらず喉は痛いままだ。
 途中車掌さんか暖房の利き具合を確認にきたが、暖房が入っている様子は無く首を傾げながら戻っていった。
 ОМСК-ПАСС(オムスク−パス)に近づくにつれて天候が悪化していき外は雨模様となってしまった。

ОМСК-ПАСС(オムスク−パス) モスクワ起点 2676km (営業キロ)


 ОМСК-ПАСС(オムスク−パス)駅には3分早着だが、かなり手前から低速で進入していく。
 早着のケースではたまにあるのだが、やはり時間調整なのだろうか?
 外に出てみるとわずかに小雨といった感じだが、傘はいらない。
 駅前広場に出てみるとそれなりに大きな街のようだ。
 構内では結構近郊電車が発着しているし、なかなか活気ののある街みたいだ。
 
 若干雨が降っているので、早めに列車に戻ると、30台と思われる男性と相席となった。
 挨拶がてらどこまで行くのか聞いてみると、ЕКАТЕРИНБ П(エカテリンブルグ)との事で、ショートトリップと言っていた。
 ショートトリップといっても、900kmくらい有るので日本の感覚では全然ショートではない。

 とりあえず空腹だったので、一度食堂車に行かせてもらう。、
 今日は食堂車も結構混雑しているようで、私が入るとほぼ全てのテーブルが埋まったようだ。
 他のテーブルではちょっとした宴会となっているようなところもあり、初めて車内で飲酒している人を目撃した。
 
 食事の方はスープのサリャンカと牛肉の煮込みを頼む。
 黒パンを付けるか聞かれたが今日もとりあえずいらないので断る。
 サリャンカの方は先日と特に変わりなく、酸味がきいてなかなか美味しい。
 メインの牛肉の方は、ロシア版肉じゃがと言った感じで若干薄味という気もしないが、まあまあいける。
 他の席からは歌が始まったりして、大分できあがってきている感じだ。
 食事が済めば席も混んでいることからさっさと自室に戻ることにしよう。

 自室に戻り同室の男性と話してみると、この方は英語が話せるので、基本的にはコミュニケーションに問題はなかった。
 この方はオムスクに出張に来ていてエカテリンブルグに換えるイリヤ氏で年齢は30台と前半といったところ。
 職業はお医者様で胃ガンの研究をしており、出張で往路は飛行機だったが、帰りは便がないので列車にしたとのこと。
 家族は奥さんと娘さんが1人でまだ小さいようだ。
 昨夜下車したイーゴリ氏もそうだが、1等車を利用するのは裕福そうな人が多くなるけど当然か。
 
 先方の興味は私がウラジオストクからモスクワまで列車で移動しているということだが、イーゴリ氏といいシベリア鉄道を全線走破するのは一般的ではなく、不思議な行為に写るらしい。
 その辺は私が鉄道好きなので、リスボンまで列車で移動する旅行の一環と説明したところ、この方も多少なりとも鉄道趣味に理解がある同志だったことから簡単な説明で納得してもらえた。
 あとはロシアの鉄道も高速化が必要と考えているようで、日本の新幹線はどんな感じなのかとの質問を受けた。
 個人的な考えでは、日本の新幹線はトータルパッケージにする必要があり、ロシアに入れるとすると線路から造らないといけない。
 さらにロシアの自然は新幹線には厳しすぎるように感じられるし、すでにシーメンスのIC3をサプサン(ハヤブサ)として導入しているので、そちらの方が有るじゃないかと指摘する。
 イリヤ氏の説明ではエカテリンブルグでサプサンを製造しているが、もっと良いシステムが有るのではと考えたらしかった。
 個人的にはIC3がロシアには合っていると思うので正直に伝えた。
 日本の新幹線だと、信号などが対応できないし専用高架線を走らせる必要があるので、とんでもない高価になると説明したら大体理解してもらえた。
 
 後は窓際に置いていたGPSロガーに興味を示したので説明すると、まるでスパイみたいと言われロシア人にスパイ認定されてしまう。
 まあ、冷戦期なら私の行動は完全にスパイになるだろうから否定しずらい部分もあるが、GPSロガーでルートを記録しただけでスパイと言われるとは思わなかった。
 これまで撮った写真を見せたりするといろいろと言われそうなので、カメラについては見せないようにしまっておいた。
 

ОМСК-ПАСС(オムスク−パス)駅舎

ОМСК-ПАСС(オムスク−パス)駅前

ОМСК-ПАСС(オムスク−パス)のエレクトリーチカ

ОМСК-ПАСС(オムスク−パス)の保存SL

サリャンカ

牛肉の煮込み

ИШИМ(イシム) モスクワ起点 2393km (営業キロ)

 ИШИМ(イシム)には18:27(現地時間20:27)に3分早着で到着した。
 12分停車だが駅構内には大した物も無さそうなので、7号車の辺りから余り動かなかった。
 隣の線に止まっていた同方向の列車が先発していくが、こちらは3等だけの連結のようだったが、それなりに混雑している。

 部屋に戻りしばらくイリヤ氏と紅茶を飲みながら話していたら、突然ベッドからイリヤ氏のノートパソコンが落下してしまう。
 心配する私をよそに本人は職場のだから壊れてくれた方が新しいのがもらえて良いようなことを言っている。
 この辺の物に対するこだわりみたいな物は、日本人とは大きく異なるのだろうな。
 後はなんと北方領土の話題を振って来たので、デリケートな問題だから話す気は無いと拒否すると、さすがにそこは分かったくれたようだが、先日のアメリカの件といい、結構ロシア人は政治的な話題で挑発してくることが多いのかな?
 
 明日イリヤ氏が下車するエカテリンブルグは3:21(現地時刻5:21)と早朝なので、適当なところで消灯して休むことにした。
 ただイリヤ氏はかなり寝言が多い上、時々シャウトするので何度も目が覚めてしまった。
 また、昨夜二人で大量に紅茶を飲んでいたせいか、結構頻繁にトイレに行きたくなったので、あんまりよく寝られなかった。

ИШИМ(イシム)駅構内

ИШИМ(イシム)駅舎

ИШИМ(イシム)駅構内

ИШИМ(イシム)駅構内