11月24日 江稜往復


 本日はソウルから日本海側の江稜まで嶺東線、太臼線経由で行ってみる。
嶺東線はソウル東側のターミナル清涼里駅から出発するが、清涼里は東京で言えば上野駅の様なものか。
乗車するムグンファ号は10時発なので9時前にホテルを出発して地下鉄で清涼里駅に向かう。
清涼里駅には9時30分頃到着だが、まだ改札が始まで時間があるようなので駅前でもちょっと見て回っいてたら丁度改札の時間になったようだ。
一応列車の写真を撮っておこうと思ったら、ちょうどホームに車掌さんがいたので撮影の許可をもらっておくことにしよう。
韓国では鉄道は準軍事施設とされるので勝手に撮影していると拘束される可能性もあるようだし、近くに職員がいるときは確認した方が無難だろう。
もっともスナップ程度は問題ないようなのでカメラを見せて撮ってもいいかとジェスチャーしたら快く許可してくれた。
いったん先頭まで行き、フランス製のいかつい機関車の写真を撮ってから座席に向かうと私の席ににはすでに老婆が陣取っていた。
私の席は窓際なので、切符を見せてどいてもらうように言うと隣の通路側を指さしてそちらに座るように言っている。
しかしせっかく車窓が良い路線で何で通路側に座らなきゃなのだ。強行に主張して席を空けさせる。
老婆は何かブツクサ言いながらも席を空けたが、最初から自分の席が決まっているんだからそこに座ればいいのに、韓国では座席指定でも早いもの勝ちなのか?

 列車は定刻に清涼里を出発するが、あまり列車の速度はあがらない。それほど線形が悪いようでもないが、江陵まで300kmちょっとなのに7時間も掛かるのはただ単に列車の速度が遅いだけのようだ。
車内は日本の特急と対して差はないが、テーブルは付いてないし、窓際にもジュースの缶などを置くスペースも無いので意外と使い勝手は悪そうだ。
この列車、列車種別で言えば急行に該当するのだがものすごく停車駅が多く、実質快速程度の位置付けなのかもしれない。
乗客のほうは比較的短距離利用者が多く、先ほどの老婆も1時間ほどで下車していった。
元々ソウル〜江稜間は高速道路が整備されており、高速バスで3時間30分だし、飛行機も結構飛んでいるので、私の様に全線を乗り通す物好きはほとんどいないだろう。
だいたい料金も鉄道で17000ウォン、飛行機で35000ウォンだし普通の感覚では鉄道は使わないはずだ。

 この列車、食堂車は無いが車内販売で弁当を売っているので昼頃1つ買い求めてみると、内容的にはあまり大したこと無い。
内容は日本の幕の内弁当をかなり貧弱にしたようなものだが値段は4000ウォンだからこんなものかもしれない。
ただこの弁当にはミネラルウォーターが付いてきたのだが、賞味期限を見たら2000年のものだった。
ずいぶんいい加減だと思ったが、怖いのでそのまま捨ててしまった。
周りの人は平気に飲んでいるが、細かいことは気にしないようだ。これが噂に聞く韓国のケンチャナヨー精神なのかな?

 途中嶺東線をショートカットする太臼線に入ると、とたんに山が深くなってきて勾配もきつくなるがどことなく大陸的というか、日本の様に急峻な山にへばりついて走ると言ったほどではないようだ。
途中の駅では下り勾配に備えてブレーキの一斉点検など日本では無くなって久しい風景が見られ、何となく鉄道施設も昔の日本の鉄道を彷彿とさせる。
太臼を過ぎて嶺東線に復帰すると、この区間のハイライト興田、羅漢亭の2連続スイッチバックを過ぎて東海に到着。

 東海で電化区間も終了し、ラストの東海〜江稜の区間はディーゼル機関車に牽引され終着駅を目指す。
ソウルを出てから7時間、途中ちょと遅れていたようだがいつの間にか遅れも回復し、ようやく終着駅江陵に到着する。
だが、すでに5時過ぎのためほとんど日が暮れかかっているので、どこかに観光に行こうかという気にならない。
この町の近くで、北朝鮮の潜水艦が座礁して銃撃戦になった事件があったが、そのときの潜水艦は海岸に放置されているらしい。
見に行くのも面白いかもしれないが、どの程度離れているのか判らないし、暗いので止めておくことにしよう。

 とりあえず夕食を食べに町の中心部に行くが、あまり人通りが多くないし、なんか町全体にあまり活気が無いようだ。
ただ車の通りは非常に多いのだが、歩道を歩いている人がほとんどいないのはなんでだろ。
別に治安が悪いようではないようだが、、、
適当な店を見つけて中に入ってみるがほかに客はいないようだ。海沿いの町なので海鮮チゲ鍋を頼むことにする。
結構辛いが、冷えた体には丁度いい。
別にどこか行くあてが有る訳ではないので、この店で1時間ほど時間をつぶしてから7時頃駅に戻ることにする。
戻る途中なぜか、若い女性に何度も声をかけられるが、何言っているのか判る訳なく、「ナン イルボンサラミヨー」(私日本人)と言ったらやたら驚いた顔をしていた。
しかし、どう見ても旅行者風の私に道を聞くのも変だし、ひょとしたらナンパでもされたのかな?
どうせ真相は分からないし、とりあえずそういうことにしておいた方が気分がいいし。
江稜の方までくる日本人もほとんどいないようだし、韓国人の旅行者と間違えられたのだろう。
(後で調べたところ、どうやら統一教会の勧誘だった可能性が高いようだ。どうせそんなオチだろうと思ったけど。)


 駅に戻ってソウル行の列車を待つが発車は10時20分でかなり時間がある。
適当に待合室のテレビでも見て時間をつぶすが、バラエティーらしき番組が流れていたので言葉が判らなくても、それなりに楽しむことができた。
たまに外でタパコをすっていると、おじさんが「タンベ、〜」といってきた。「まあたばこくれない?」くらいは判るので、1本あげると何か話しかけてきた。
判らないので先ほどと同じく日本人であることを言うとまた驚いていたようだ。そんなにこの町は日本人が珍しいのか?

10時過ぎに改札が始まり、最後尾の寝台車に向かう。
車内には専用の車掌さんがおり、ベットまで案内してもらった。
韓国の寝台列車は日本の開放型A寝台に似ているが、半個室の様な仕切が有るためベットはそれほど広くはない。
高さは十分だが、幅はB寝台より気持ち広いかな?と言う程度であった。
まあソウルまでの料金が50000ウォン程度なのを考えると格安なのは確かなのでこんなものでしょう。

定刻に列車はソウルに向けて発車したが、意外と古い客車のせいか乗り心地はあまり良くない。
特にブレーキをかけるともの凄い音がして途中何度か目が覚めてしまったが、そのうち深い眠りに落ちていった。