2002.9.19 7日目 St.Moritz移動 氷河特急乗車 

 この日は夜明けの時にマッターホルンの頂上が赤く染まるモルゲンロートが見られるかと思って前日にレセプションで日の出の時刻を聞いておいたのだが、外に行こうかと思ったらもろにガスっているし、小雨もパラつくあいにくの天気だ。
 部屋のテレビでゴルナーグラードのライブカメラも見られるので確認してみると、ゴルナーグラードからもマッターホルンは見えない位天候が悪い。
 まあ今日はほとんど1日列車に乗り通しになるので、ちょっとくらいの天候不良は問題ないでしょう。

 今日乗車する氷河特急は9時30分発のサン・モリッツ行きだ。
サン・モリッツ行きはこの列車の40分前にも出発するが、全車パノラマ車のため、狭いし窓も開かないので敬遠させて貰った。

 発車1時間くらい前から駅に行き、構内を適当にぶらつきながら1本前の氷河急行を見て過ごしたりする。
 先発の氷河急行は全車1等車のためか、あんまり乗客は乗っていないみたいだ。
 ただ、パノラマ車のため、私が乗る列車よりは人気があるようだから、私が乗る列車はガラガラかもしれないな。
 さて私の乗る列車が入線してきたので、予約した席に行くと何故かダブルブッキングされていた。
 まあ予約はそれほど入っていないようなので、席を譲ってほかの席に行くことにしよう。
 喫煙席の区画のほうは無人なので、そちらの席を確保する。
 人がいない方が窓を開けたりするのに好都合だしね。

 さてこの列車、特急という割には速度が速くないので終着駅のサン・モリッツまで8時間かかる。
 ツェルマット〜サンモリッツ間は直線距離で200km程度なのだが、線路は大回りしているうえ、アルプスの峠越えを行う関係で速度があがらないのでしょうがないところ。
 その分沿線の景色はすばらしいのだが、残念なことに名前の由来の氷河はフルカ峠をの直下を通過する新線に切り替えてから見ることはできなくなってしまったそうだ。
 ちょっとだけ看板に偽りありの様な気もしないでもないが、細かいことを気にしてもしょうがない。

 列車の方は定刻にツェルマットを発車し、快調に滑り出す。
BVZの終点ブリークまでは一昨日に乗ったばかりなので、それほど真剣に車窓に見入るほどでもない。
 行きの時はその存在もよく知らなかったヘルブリンゲンの崩落現場をガイドブックで知ったので、そこだけはちゃんと見ておくことにしよう。

 BVZの沿線は峡谷を縫って走るため、断崖絶壁の区間などもありそれなりに見せ場もあるのだが、余り見通しが利かないため私的にはあんまり面白い車窓ではないな。
 BVZの終点ブリークに到着すると、ここで進行方向を変えて、次のフルカ・オバーアルプ鉄道(以下FO)に乗り入れる。
 ここで機関車を交換するのだが色違いなだけで基本的に同じ形式だ。
 ただ性能はだいぶ違うようで、最高速度には以下のような差がある。
         
通常区間 ラックレール区間
BVZ 90km/h 35km/h
F O 60km/h 30km/h

 ここからは最高速度が60km/hに落ちるし、アルプス越えの区間なのでラックレールも多くなるだろうからさらに速度が落ちそうだ。

 ここでこれまで私だけだった室内に1組の老夫婦がやってきた。
 隣の禁煙区画には日本人のツアー客も加わったようだが、この人たちが何度も通路のドア中途半端に開けたまま立ち去るので、ご婦人の方はちょっとご立腹のようだ。
 最後は立ち去ろうとする人の腕を捕まえて、閉めて行けと注意してたがまあ気持ちは分かるよなあ。
 こちらも国辱になるのはごめんなので、しばらくは代わりに閉めに行ったりしていたおかげか、悪い印象は持たれなかったようだ。
 ただ話してみたらフランス語しか話せないのでコミュニケーションは取れなかった。(ちょっとした挨拶くらいで終わってしまった。)

 ブリークに到着するときにはちょっと遅れていたようだが、停車時間が長かったため定時でブリークを出発。
 ブリークの市街を抜けるとすぐに急勾配の区間が現れ、速度はグンと遅くなる。
 その分景色はみごたえがあるのだが、私が陣取った席は山側で全然景色が良くない。
 谷側の席は老夫婦がいるし、他の席も乗務員が座ってなにやら切符の集計などをしているらしく空いている席がないので、せっかくの景色もよく見られじまいだ。
 そのうち車内販売のワゴンが廻ってきたので、名物の傾いたワイングラスを購入する。
 ただのグラスの傾きは相当大げさにしてあるので、実際には坂でグラスの縁が水平になるわけではない。
 まあ一種のジョークでしょう。

 途中のオーバーワルトで食堂車を連結するため小休止、ここからは新フルカトンネルで一気にフルカ峠の下を突っ切る形になる。
 以前の峠越えルートの旧線の方は保存鉄道としてSLも走る観光路線として生まれ変わった様だが、今回は時間がないので泣く泣くあきらめた。

 今回は食堂車の予約がないので、食事は車内販売のサンドウィッチで済ますことにしよう。
 食堂車の方も予約していなくても席に余裕があれば食事できるみたいだが、私の座っている1等車は編成の最後尾、食堂車は一番先頭ではちょっと行く気にならない。
 新フルカトンネルを通過してしばらくするしアルプスの十字路アンデルマットに到着、この街の直下をゴッダルドトンネルが通過しており、ここアンデルマットからは国鉄線への連絡用の支線もある。
 ツアーの一行さんはここで乗り換えのようで向かい側の連絡列車に移っていった。

 アンデルマットを出発すると葛折の線路で高度を稼いで、最高地点のオーバーアルプパスヘーエを目指す。
 眼下にはアンデルマットの街が見え、大して距離がないのに一気に高度を上げたのがよく分かる。
 沿線にはゴルフ場があったりして、何となくスイスというとスキー場というイメージしかなかったが、ちゃんとゴルフ場あるのかと珍しい物でも見つけた気分になる。
峠を過ぎると、次のレーティシュ鉄道(以下RhB)との接続駅ディセンティスに到着。
 ここでFOからRhBの機関車に交換のためまたしても小休止だ。
 この先のRhBはラックレールの区間がないので、今までお世話になったラックレールともここでお別れだな。
 
 この先クールまではずっと下りのため快調に列車は進んで行くが、ちょっと車窓が単調なためかしばらくは適当に外を見ていたのだが、そのうち居眠りしてしまい、気が付いたらクールの直前だった。

 クールで進行方向をまた変えて、サン・モリッツに向かって出発。
 ブリークから乗ってきていた老夫婦も途中のティーフェンカステルで下車の様だ。
 私が車窓の写真を取るのに窓開けなかったのに気が付いていたのか、この先のランドヴァッサー橋では気にせず窓を開ければ良いとアドバイスをくれて去っていった。
 
 スイスで一番有名な橋、ランドヴァッサー橋を目前にして車内は私一人になったので遠慮せず窓を開けさせて貰うことにしましょう。
 ただ天候がちょっと悪いのが気に掛かるけど、、、

 そろそろ橋の辺りなので準備していると、いい感じで写真が撮れそうだ。
 通過時には構図もタイミングもぴったりとと思っていたが、後で見てみたらレンズに思いっきり水滴がついてぼやけてた。
 かな〜りショックだが、しょうがない明後日の帰りの時に再チャレンジしましょう。
 ランドヴァサー橋を通過し、ダボス線の分岐駅フェリズールを過ぎると次はベルギュン〜プレダ間の連続ループ線の区間だ。
 この区間は直線距離で3km位なのだが、400mの高低差があるためループ線にオメガカーブ等で距離を稼いで12kmもの区間長になる。
 そのため線路が何重にも折り重なった形となり、まるで模型のレイアウトでも見ているような気分となる。
 RhBはラックレールを使うと輸送力障害となると考えたらしく、全区間粘着運転を実施しているが、その分このように高さを稼ぐのに遠回りする必要がでてしまった。
 ラックレールならもっと短距離で上がれるのかもしれないが、どちらも一長一短と言った感じで、優劣は付けられないみたいだな。

 ここを過ぎれば氷河特急の見せ場も終了で、後はアルブラトンネルを通過すれば終点サン・モリッツはもう目前だ。
 夕方6時前、終点サン・モリッツに無事到着。
 流石に8時間も乗っているとちょっと疲れたかな。
 今夜の宿はまたしても駅前に取ったので、さっさとチェックを済ますことにしよう。
 まだ日の入りまではちょっとあるので、市内をブラ〜ッと一回りしてみるか。
 ただサン・モリッツはリゾート地のためあんまり見るところはなさそうだ。
 街の中も高級ブランドの店が建ち並び、何となく場違いなところに来た様な印象を受ける。
 町中は見てもしょうがなさそうなので、湖の方を歩いてからホテルに戻ることにしよう。
 
 どうも今日は食欲がなく、無理してまで食べたい気分でなかったので夕食は食べずに9時頃就寝してしまった。