2003.9.15 5日目 ハルシュタット移動 

    
 この日は8時過ぎのICでハルシュタットに移動する。
 駅はホテルの真ん前だし慌てて起き出す必要も無く、7時過ぎにホテルの食堂で朝食を取ってから動き出すが、食堂の方は中国人の団体さんがいるため朝からかなりにぎやかだ。
 8時前にホテルをチェックアウトし駅向かうが、私が乗るICはまだ入線していない様だ。
 出発の20分ほど前になり列車が入線してくると、編成は昨日乗った4010系を2本連結した結構長い列車であった。
 昨日は2等車だったので今日は1等車に陣取るが、車内はぱっと見2等車と区別が付かない。
 気が付いた唯一の点は座席がリクライニングするくらいだろうか。

 列車は定刻に発車し、途中までは昨日移動してきたルートでブリック.a.d.ミュラーまで戻るが、時刻表ではブリック.a.d.ミュラーに停車しないことになっている。
 地形的にはここで折り返さないといけないはずと思っていたら、駅の手前の短絡線をショートカットして、進路を西に向けた。
 車窓にはのどかな田園風景が広がり遠くにはアルプスも見える。 
 
 列車は若干遅れ気味だが、途中停車時間が長い駅で調整して、10時30分過ぎに乗換駅のシュタイナッハ・イルドニングに到着。
 向かいのホームに止まっている接続列車に乗り換えるが、近郊区間用の列車のため2等車しかないようだ。
 目的地のハルシュタットまでは約1時間だが結構な山岳路線のようで、シュタイナッハ・イルドニングを出発するとグングン高度を上げて行く。
 急カーブと急勾配が続き、隣の道路を走る車にどんどん抜かれていってしまう。
 20分ほどで峠を越えて高原地帯に入ると列車も快調に速度を上げて進んでいく。
 そのうち進行方向にの左手に湖が見え出すと、目的地ハルシュタットはもうすぐだ。
 ハルシュタットの駅に着くと、山間の小さな駅で人家もほとんどなく、森に囲まれているためちょっとした秘境の駅と行った趣だ。
 駅から通じる小道を100mほど下ると、湖の対岸へ渡し船乗り場ある。
 列車の到着に合わせて船が運航されているので、そのまま船に乗り込み、対岸のハルシュタット村へ向かう。
 船に乗っているのは正味5分ほどで、鏡のように穏やかな湖のため船酔いとは無縁で助った。
    
 さて本日はホテルを予約してないので、とりあえず宿を探さないといけない。
 教会の先のマルクト広場の辺りに何軒かホテルが有るようなので、ガイドブックに載っていたツァウァー・ゼーフィルトホテルに行ってみるが、場所はわかっても入り口がよくわからない。
 ここでうろうろしているのも何なので、同じマルク広場の湖側にあるゼーホテル・グリューナー・バウムに変更してみよう。
 ホテルの受付では猟師風のいでたちの主人が迎えてくれて、まだ昼過ぎであることから、問題なく部屋を確保できた。
 部屋の方はバス・トイレ共同のシングルか、バス・トイレ付きでレイクサイドビューのツインが選べるので、ちょっただけ高いけど、折角だから85ユーロのツインルームに一泊する事にしよう。

 部屋に入るのに扉が2重になっており、最初の扉は鍵が掛かっていなかったのだが、そんなことは知らないので鍵穴に鍵を差し込んで悪戦苦闘しばし。
 そのうち通りかかったホテルの人が内側の扉のみ鍵を開けることを教えてくれたが、先入観で全くそんな事には気が付かなかった。

 部屋の方は結構綺麗で広いが、年期が入ってるなという印象。
 歩くと床がきしむし、ベットは小さめだ。
 でも、テラスの外には湖が広がり、なかなかの眺め目で満足度は高い。
 
     
 部屋に荷物を置くとさっさく村の方に繰り出すことにしよう。
 船着き場の辺りには教会が2つあり、狭い路地と階段を通って高台にあるカトリック教会に向かってみる。
 教会の裏は墓地になっており、綺麗に花が飾られて、狭い墓地だがよく整備されているようだ。
 ハルシュタットの村は山と湖に挟まれた狭い所に家が密集していることから、墓地の確保には色々問題を抱えていたようだ。
 そのため墓地の奥にはバインハウスがあり、埋葬されてから10年程度すると、遺骨を掘り返して、バインハウスの中に骨を並べて保管する風習の様だ。
 そのためバインハウスの中は骸骨でいっぱいで、頭蓋骨などに名前や没年などが記入されて整然と並べられている。
 一応内部には入ったが、流石に遺骨の写真を取るのは死者を冒涜するようでしなかった。
 遺骨の没年を見てみると18世紀辺りから20世紀初頭の人の遺骨が大部分のようだ。

 カトリック教会の後は、船着き場とその奥の教会(カトリック教会でない方の教会)の辺りを写真に納めるべく、湖に沿って来たの方に歩いていく。
ガイドブックでは必ず載る構図で写真を取ってみたかったのだが、時間が悪く逆光の上、超広角レンズで無いと全体が収まらないようだ。
光線の具合が悪いのは、明日の朝来るとして、広角レンズが無いのだけはどうしようもないな。
     
 撮影後は村を北から南に縦断しながら散策して、最終的には裏手の山に上がるケーブルカー乗り場を目指すことにしよう。
 とりあえず、船着き場の隣に有る教会を覗いてみるが、中は特筆するような事もない普通というか、ほんとに何も無い教会なのでさらっと流してメインストリートを南に向かう。
 裏手の山には滝が有ったりして、それなりに絵になるのだが、途中特別な見所もなく町並みを見て歩くだけになりそうだ。
 そう言えば昼飯もまだ食べてなかったので、途中にあった湖畔のレストランのテラス席に陣取り、ガーリックのスープと鮭のステーキで昼食とする。
 ただ食事をしていると周りに蜂がたくさんいるためちょっと落ち着かない。
 おまけに飲みかけのスープで蜂が1匹溺れて溺死する事件まで発生してしまった。
 一応遺体は出して、残りは適当に飲んでしまったが、哀れな犠牲者にちょっとだけ合掌。
 食後はメインストリートをさらに南下し、裏手に上がるケーブルカーに乗車。
 一応切符は往復で買ったけど、歩けるようなら歩いて戻ろうかな?

 ケーブルカーであっという間に裏手に上がるが、駅の近辺は鬱蒼とした森のため視界はほとんど開けない。
 駅からちょっと上がったところにカフェがあり、そこからなら少しは眺望が開けてそうなので、一休みしていくことにしよう。

一番見晴らしのよさげな辺りは、すでに先客でうまっていので、空いている席の中で、比較的景色が見られそうな場所を選んで陣取ることにする。
 ハルシュタットの村自体は、テラスの直下のため森に阻まれて見ることができないが、ハルシュタット湖の南の外れのオーバートラウンの村の辺りが一望できる。
 丁度カメラを構えていたら、列車が走ってきたので一応撮ってみるが、500mm相当の望遠でも余り大きくは写らないようだ。
    
 テラスで風景を眺めていたら、丁度ハイキング帰りらしい、地元のおじさん3人と相席になったのだが、汗まみれの服を目の前で着替え始めるのにはちょっとまいった。
 テラスで着替えをするなとは言わないが、「俺の目の前にそのビア樽みたいな腹を突き出すな」と内心悪態をつく。(そんな高度なことを言う語学の力は無いので。)
 いつもなら相席となった人たちと多少は話をするのだが、この一件でこちらは完全に精神的に後退し、風景を見るのに専念して目を合わせないようにする。
 さっさと飲み物とケーキを食べ終えたら、移動することにしよう。
 この近辺には岩塩鉱があり、この近辺の名所らしいのだが、余り興味がないし、歩いて結構時間も掛かることからあっさりパス。
 帰りはケーブルカーで降りても面白くないし、カフェのすぐそばから登山道が村まで通じているのでそのまま、歩いて降りてみることにしよう。
 ハルシュタットの村まで、約40分ほどで、途中で凄く景色が良いところが有るのではと期待していたが、完全に森の中を進んでいくので視界はほとんど開けない。
 途中ダウンヒルをしているマウンテンバイクがコーナーをドリフトしながらかっ飛んでいくのに遭遇するくらいで、ただ下坂の登山道をとぼとぼ歩いていく。
 村まで大体半分来たところで、山肌にぽっかりと口を開けた鉱山跡が出てきたが、入り口の上にはフランツ・ヨーゼフと皇帝の名前が掲げられている。
 何のための鉱山かよく分からないが、アクセスするのに登山道しかないこの場所にこんな立派に入り口が有るのが不思議でならない。

 村にだいぶ近づいたところで、やっとハルシュタットの村を上から見ることができる場所を発見するが、結構木が邪魔で全体をフレームに納めるのは難しい。
 最後の区間は階段なり、家の軒先を下っていけば無事出発地点のハルシュタットに到着。
 ただずっと下り坂を降りてきたので、結構膝が痛い。
 戻ってきたのは16時過ぎで、ホテルに戻るにはまだ早いことから、いったん船着き場の辺りに向かい、ベンチに腰掛けてしばし物思いに耽る。
 17時前に船着き場のケバブ屋で水を買い込みホテルに引き上げることにしよう。
山陰のためか、暗くなるのが早いようで、後はホテルのテラスでメールを打ったりしながらすごす。
 でもこのホテルは部屋に電話が無いようなので、後で公衆電話でも探すかな。 
     
 7時過ぎには食事でもと思い、外に出るとすでに通りの店は全て閉まっており、やっている店はないようだ。
 それほど空腹と言うわけでもないので、今夜は晩飯抜きだ。
 メールを送るための公衆電話も見あたらないことから、送信はあきらめ部屋に引きこもり、テラスで過ごすことにしよう。

 ハルシュタットの村の辺りは周りに明かりが少ないため、すばらしい星空が見れる。
 そう言えばここしばらく星空を見上げることも無かったっけ・・・

明日はシャーフベルク山に登ってからザルツブルクに移動だ。