この日は今回の旅行の目的の一つゾグネ・フィヨルド観光だ。
正直ここが無ければベルゲンまで来ることもなかっただろう。
本日乗車するフロム線も景勝路線として有名なので、どのようなパノラマが展開されるか非常に楽しみだ。
ルートはベルゲン→ミュルダール→フロム→クドヴァンゲン→ヴォス→ベルゲンとフィヨルドツアーの王道とも言えるコースだ。
ベルゲン→ミュルダール
ミュルダールまでは昨日の明け方列車で通過した区間だが、朝早かったためちゃんと景色を見ていないので今日の移動でちゃんと見ておく必要がある。。
列車は8時40分の出発だが、混雑していることを考えて8時前に駅に移動しておく。
列車はすでに入線しており、車内にはチラホラと乗客が見える。
本日の第一走者はBM69系の近郊型で、3両編成のうち先頭1両は団体の貸し切りのためだろうか締め切られていた。
席のほうはまだ余裕があるので、進行方向左側に向かい合わせで座り二人とも窓側席を確保する。
発車時間が近づくにつれて乗客はどんどん増えてきて、発車間際には座りきれない人もチラホラと出ているようだ。
我々のボックス席には小さな女の子を連れた日本人女性3人組がやってきたが、良い席がないのに不満なようだ。
他に良い席がないのかいろいろと探していてるようだが、正直発車時刻近くになってやってきても無理な相談だろう。
別に話に聞き耳を立てるつもりはないのだが、結構うるさいので話してる内容が自然に耳に入ってしまう。
どうやらそのうちの一人はヴァージンアトランティック航空の客室乗務員のようなのでその後我々は彼女たちをスッチー3人組と呼称することとなる。
我々も人のことを言えた義理ではないのだろうが、彼女たちの話し声のうるささと振る舞いを見ていると余り良い感じがしない。
正直関わる必要もないだろうから、同じボックスにいても完全無視を決め込んでミュルダールに向かう。
列車はベルゲンから1時間のヴォスまでは進行方向左側にフィヨルドが広がり景色がよいのだが、ヴォスから先は右側の方が景色が良い。
満員の車内では席の移動など不可能なので、よく見えないのが残念なところだ。
ヴォスから先は峠になっており、急勾配、急曲線を列車はゆっくりと進んでいく。
しかし首都と第2の都市を結ぶ幹線が、単線で線形も悪いというのはずいぶん違和感があり、もうちょと立派な線路でも良さそうだ。
途中駅での列車交換もそれなりにあるようだが、複線化するほどの需要がないのだろうか?
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ミュルダール→フロム
列車は約2時間でミュルダールに到着。
標高が高いせいか駅の周りには6月だというのに残雪が残っておりかなり寒い。
まずこの駅ですることはここまでは国鉄線区間ではユーレイルパスを使用していたので、この先のフロム経由でヴォスまでの乗車券を購入する必要がある。
幸いこの駅は有人駅なので、無事購入することが出来た。
フロム鉄道の区間はパス所持者は割り引かれるようで、当初の想定よりもちょっとだけ安くなったのが助かる。
駅のホームは到着した客で結構にぎわっているが、接続のフロム行きの列車はまだ来ていない。
結構日本人の比率も高く、昨日フロム山で写真を撮るように頼まれた日本人女性もやってきている。
駅のオスロ方はトンネルが隣接しているが、フロム線の線路は駅を出たらすぐに急勾配で坂を下っている。
最大勾配は55パーミル(55/1000)でガイドには標準軌では世界でもっとも急勾配と書かれていたが、箱根登山鉄道は標準軌80パーミルだし看板に偽り有りではないだろうか。
事前に調べたところ、ここも進行方向左側を確保する必要があるのだが、乗車位置がどこだかわからないので当たりをつけてホームで待つ。
やっとやってきた列車はClass17型機関車が客車の前後に連結された編成で、客車は6両ほどなので余裕で席を確保できると思ったが、乗っていた乗客がほとんど降りない。
往復する乗客が予想以上に多く、結局進行方向右側の席しか確保できなかったのは痛い。
しかしフロムからやってくる乗客が何でこんなに多いのか不思議だ。
フロム自体は小さな村だし、朝のこの時間ではフロムからやってくる人はたかが知れていると思うのだが・・・・。
列車は定刻でフロムに向けて出発し、すぐにトンネルというかスノーシュッドに入り、急勾配をそろそろと下っていく。
路線長は20kmほどだが列車の速度が遅いので乗っている時間は意外と長い。
思っていた以上に途中駅が多いようで、それなりに人家もあって乗車する人チラホラといる。
完全な観光鉄道かと思ったが地域住民の交通機関としても機能しているようだ。
列車はトンネルとループで急速に高度を落としていくが、見晴らしの良いのは反対側のため景色が見れずにやきもきしてしまう。
眼下に湖が見えたと思ったらこの先停車するヒョースの滝の水源の様だ。
トンネルに挟まれた小さな駅に停車するとそこが有名なヒョースの滝で、見物のために5分停車する。
ホームまで水しぶきがかかり、カメラを気にしながら滝を見物していると、突然音楽と共に滝のそばにある廃屋から青いドレスを着た女性が踊り始める演出があった。
ちょっとやり過ぎとの感も否めないが、どういった意味で女性が踊っているのかは気にかかるところ。
何か伝説でもあるのだろうか?
しかしたまに来る列車のために水しぶきがかかる廃屋で待機しているのも大変そうだ。
滝の写真を撮りたいのだが、ホームには人があふれてなかなか良いアングルが決まらない。
前に出過ぎると飛沫がかかるとし、色々と悩ましいところだ。
余り飛沫がかからないように気をつけていたつもりだったが、車内に戻るとカメラの調子がおかしくて一瞬焦る。
結局はレンズの水滴でオートフォーカスが惑わされただけで、拭ったら正常に戻り安堵する。 |
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その後もゆっくりと勾配を下り、途中川を2回横断するのだが、川自体が岩のトンネルを形成しているため線路には橋がないのがおもしろい。
フロム線もは終盤の区間になるとだいぶ勾配が緩くなり、フィヨルドに突き当たるとまもなく終点フロムに到着だ。
ミュルダールから1時間ほどで列車の旅も無事終了。
駅前はすぐにフェリー乗り場となっており、駅周辺は土産物屋とレストランばかりのようだ。
少し先には小さな入り江に停泊するには不釣り合いな大型客船が停泊している。
船の乗客がフロム線に乗っていたらしく、結構な人数が客船の方に戻っていく。
フロム線の乗客が多かった理由もこの客船の乗客だったかと納得するが景色がちゃんと見られなかったのは不完全燃焼で納得がいかない。
仕方がないがまた何らかの理由を付けて訪れることにしようかな。
乗り継ぎのフェリーまでは3時間あるので、しばらく駅周辺を散策してから食事にすることにしよう。
まず最初は駅に併設されている土産物屋を覗いてみる。
かなり大きな土産物屋で、妻の方がやっと納得のいく鍋つかみを見つけたようで、お土産用に2つ購入する。
列車が到着してから多少時間が経ったせいか列車の周りの人がいなくなったので停車している列車を観察させてもらおう。
急勾配のためにブレーキに負担が掛かるのはわかるが、ブレーキシューがかなり摩耗している。
機関車自体は急勾配専用機ではないようだが、使用方法に無理があるように考えるのは勘ぐりすぎだろうか。 |
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フロムの村自体は見所もほとんどないことから、駅に戻り併設されているレストランで昼食にする。
何か変わった物はないかと思ったら、ムース(トナカイ)のハンバーグがあるようなので、注文してみる。
妻はサーモンのグリルと無難な選択のようだ。
味的には普通のハンバーグと特に変わったようには感じられないが、なぜか一緒にブルーベリージャムが添えられていたのには理解しかねる。
結局ジャムは使わなかったが、こちらでは肉料理にジャムを付ける習慣があるのだろうか?
食事が終わってもフェリーまでは1時間半以上も時間がある。
駅に隣接してフロム線の鉄道博物館が設置されているので、覗いて行ってみると、路線の建設に関する経緯の展示がメインで車両は奥の方に電気機関車が1両と入替用らしいディーゼル機関車の2両のみだ。
解説もノルウェー語のため理解できず、さらっと見たら駅周辺の散策に向かうことにしよう。
駅周辺の土産物屋を適当に見ていくが、どの店も品揃えは同じような物で、改めて購入するような物はない。
村の外れまで来ると適当な広場にベンチが置かれていたので、しばらくはそこで景色を眺めて過ごす。
ミュルダールはかなり寒かったが、800m高度が下がったフロムはちょうど良い気温で、ベンチで日光浴しているととても気持ちいい。
そろそろフェリーの出航まで30分程度となったので、フェリー乗り場に向かうことにしよう。
あまりゆっくり構えていると良い席が、取れないかもしれないし。
フェリー乗り場ではもうすでに結構な人数が並んでいるので、その後ろについて乗船が始まるのを待つ。
出航の10分ほど前になると乗船が開始され、後ろのデッキで景色が見やすそうな場所を無事確保できた。
ただ、表なので風に吹かれると寒いかもしれないな。 |
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フロム→クドヴァンゲン
フェリーは15時に出航し、フィヨルドの最深部をクドヴァンゲンに向かって進んでいく。
フェリー自体は完全な観光用ではなく、フィヨルド内の交通手段でもあり、途中の小さな村にもこまめにて寄っていく。
後部デッキも日が当たっていれば多少風が冷たいものの、何とか耐えられる程度だ。
フェリーの乗客から餌がもらえるのか、カモメが出航してからずっと後をついてくる。
餌をもらうことに慣れているようでビスケットを持って手を伸ばしてみると器用にビスケットを持っていく。
妻に頼んでカモメが餌を持っていく瞬間を写真に撮ってもらうが、動きが早すぎてうまく撮れないようだ。
船内では特にすることもなく景色に見入るが、切り立った崖が両側にそそり立つ風景に圧倒される。
ただ谷が深すぎて日が当たらなくなると、とたんに寒くなるのが辛いところだ。
出航してしばらくするとベルゲン行きの高速艇が追い越していった。
本当にフィヨルドを縦断するなら高速船を利用するべきなのだが、クドヴァンゲンからヴォスに向かうバスが途中で立ち寄るスタルハイムホテルの風景の方を優先させたことから今回は見送る。
船内の案内放送は各国語で放送され、日本語もあるのが助かる。
途中、中国人の男性に何度か写真を撮るように頼まれるが、回数が多くなってくると正直面倒くさいな。
そのうちだいぶ風が強くなってきたことから、一時室内に避難するものの、天候が回復したら再度後部デッキに陣取るのだった。 |
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クドヴァンゲン→ヴォス
フロムから約2時間でフェリーの旅も終わりクドヴァンゲンに到着するが、到着直前の船内放送で船を降りたらすぐにバスに乗るように急かす放送があった。
そのため乗客が出口に集まり、接岸と同時に停車しているバスに群がるが、私が見たところツアーの観光バスばかりで路線バスは無いように思えた。
その見立ては正解だったようで、観光バスを路線バスと勘違いして乗り込もうとしている人たちを必死に観光バスの運転士が止めていた。
急かすような放送があったが、バスはまだ到着していないようでしばらくはフェリー乗り場の前でバスを待つことになる。
ここでも土産物屋があるのと、結構村自体が日陰となっているため寒いことからバスが到着するまでは土産物屋の店内に避難させてもらうことにしよう。
バスを待つ人は結構多く、1,2台ではとうてい乗り切れそうもないが、大丈夫だろうか?
ある程度のところでバスを待つためにバス乗り場に移動するが、バス停の看板と路面に書かれたマーキングを勘案すると、乗客が集まっている辺りとは違う場所にバスが停車するようだ。
周りに合わせて集団の中で待つと良い席が確保出来そうにないことから、自分の推測を信じてドアの位置となる辺りでしばし待つことにする。
そのうちバスがやってきたがこちらの判断で正解だったようで我々の目の前にバスが停車し、他の乗客があわててこちらに移動してくるが、悠々と最前列の見晴らしの良い席を確保できた。
結局バスは3台やってきて、待っていた乗客全員が乗ることは出来たようだ。
行きの電車で隣に座っていたスッチー3人組も良い席を確保ししようといろいろ画策していたようだが、待っていた位置が悪くて結局バラバラに乗ることになってしまい、ブツクサと文句を言っていた。
席の確保に執念を燃やすのは良いのだが、彼女たちは余り要領が良くないように思えるのが正直な感想だ。
バスは谷沿い国道を走っていくが、途中からはやたらと狭い道に入らないといけないらしい。
急な上り坂のうえにバスがやっと通れるほど狭い葛折りの道をゆっくりとバスは上がっていく。
周りには無数の滝があり、クドヴァンゲン方面の見晴らしは高度が上がるにつれすばらしいものになっていく。
坂道を上りきるとそこはスタルハイムホテルで、ここで10分ほどの休憩となる。
ホテルの裏庭から眺める景色がすばらしいとのことで、そっさく裏手に回ると雄大な景色が展開されており、夢中でシャッターを切りまくる。
停車時間が10分ほどなのであわててバスに戻らないといけないが、ここの風景を見るためにこのルートにした甲斐はあったようだ。
スタルハイムホテル後にすると後はヴォスの駅で国鉄に乗り換えるだけだ。
先ほどと風景は一変して、険しい山道からのどかな田園風景の中を結構なペースで進んでいく。
バスは定刻の19時前に無事ヴォス駅に到着し、駅に停車している電車に乗り換えだ。
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ヴォス→ベルゲン
ヴォスでの待ち合わせ時間は30分ほどて、そろそろ夕食の時間であることから構内のコンビニでホットドッグを仕入れて車内で食べることにする。
車内は行きに比べるとだいぶ余裕があるようで、6人掛けのボックス席を二人で占領してベルゲンに向かう。
車窓の風景は行きに見たのと同じなので、新鮮さはないな。
我々が座っていたのは運転席直後の席だったのだが、トンネルに入るたびに我々と通路を挟んだ席の上部の窓が内側に開いてしまう。
どうも風圧の関係で勝手に開いてしまうようだ。
私の方の席ではトンネルに入りそうになると手で押さえて開かないようにしていたが、反対側の席に座る上品そうな奥様二人連れは、何度も開くのに最後はだいぶ切れ気味のご様子で、開くたびに八つ当たり気味に強く閉じていた。
列車ば順調に進み、定刻の20時にベルゲン駅に到着。
今日はこのままホテルに戻るだけだ。
さて明日はフィヨルドツアーの予備日に当てていたのだが、予定通り今日回ることが出来たので1日完全に空いてしまった。
明日はどうするか帰ってから考えることにするか。
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