2007年 6月17日 22日目 スタバンゲル観光

 本日の天候は予報通り朝から雨が降っている。
 この天気ではプレーケストーレンへの登山は無理なので予定通り、スタバンゲルの市内観光に出かけることにしよう。
 久しぶりに傘を持っての観光となり、一眼デジカメを持っていく気にもならないので部屋でお留守番だ。
 今日は一日ixyだけ持って身軽に行動できるようにしよう。

 ホテルで朝食を取るがツアーの団体さん多く、席がなかなか空いていない。
 何とか確保するがここのホテルは品数が多く、色々食べられるのが助かる。
 どうせ昼、夕食はまた粗末な物になるだろうし。
 朝食後はロビーのコーヒーでももらおうかと思ったら、みんなが利用し過ぎたのか故障してしまっているようだ。
 仕方ないので、コーヒーについてはあきらめて、部屋に戻り外出の準備を行う。

 さて本日はスタバンゲルの市内観光となるが、意外と見るところは少ない。
 もともと北海油田の基地として発展してきた経緯が有るため観光資源は、近郊のプレーケストーレン以外はほとんどないと思っても良いようだ。
 とりあえず市内にはいくつかの博物館があることから、天候も悪いしそちらの方を適当に見て回ることにしよう。
 
 まず最初に行ってみることにしたのは旧市街にある缶詰博物館で、ここは11時から開館することから10時半過ぎにホテルを出発し、旧市街へと向かう。
 今日は日曜日と言うこともあるが、通を歩いている人はほとんどおらず、店も閉まっていることから大通りも閑散としている。
 旧市街に着くまでに見かけた人もほとんどおらず、ゴーストタウンのようだ。
 15分ほどで旧市街の缶詰博物館に到着するが、まだ開館までは15分以上時間がある。
 雨足が強くなったようなので入り口の辺りで雨宿りしながら開館するのを待つことにしよう。

 博物館は予定通り11時に開館し内部の見学に移るが、昔の缶詰工場を博物館に改装したようでそれほど大きな建物ではないようだ。
 ここではオイルサーディンを作っていたようで、缶詰の機械の他は奥の方に薫製にする釜などが展示されている。
 備え付けの展示物だけを見ているとあっという間に終わってしまいそうだが、ここの缶詰の歴史についてビデオが流れているので、じっくり腰掛けて見ていたら結構に時間が過ぎていた。
 見学後は受付の所にオイルサーディンの缶詰が売られていたことからお土産用に購入しておく。
 (キング・オスカーという缶詰だが、日本国内のスーパーでも売られていた。帰国後1つ食べてみたが、オリーブオイル漬けの物はそれだけではちょっとおかずにするのには厳しい。)
 缶詰博物館を後にすると、フェリーターミナルのそばにあるノルウェー石油博物館に向かうことにしよう。
 港沿いの道を歩いていくが、結構雨は強いし気温も低いので到着までに体が冷えてしまった。

 ここは北海油田の石油基地を模した外観となっており、石油の採掘方法や海上基地の様子を再現したブースがありなかなかおもしろい。
 説明文は相変わらずよくわからないが、ただ見るだけでなくいろいろ体感出来るようになっているので良くはわからないが適当に試してみることにしよう。
 石油基地での緊急時の脱出艇に入ってみたり、水中探査機の操作シミュレーターに挑戦したりしていると結構な時間が経っていた。 
 外に出ると雨もやんでおり、やっと傘から解放される。
 石油博物館では思っていた以上に長居していたようで、時間はそろそろ13時半だ。
 お腹の方もすいてきたことからマーケット広場でやっていたベーグル屋で昼食とする。
 注文する前は物足りないかもと思ったが、挟まれている具のボリュームが結構あって意外と満足できた。
 店内で食事をしていると、表ではブラスバンドのバレードがやってきているようで、遠くの方から近づいてくるのがわかる。
 表に出て見ると結構こぢんまりとしたパレードで、ブラスバンドの後には子供たちが一緒に行進してきている。
 ただ子供たちはずいぶんとかったるそうで、あからさまに嫌々やっているのがわかる。
 結局何のパレードだかはよくわからないが、旧市街に消えていってしまった。
 
 食後は市街の西側にあるレドールをとブライダブリックに向かうことにしよう。
 レドールは19世紀に建造された有力者の屋敷で現在は王族の夏の保養地として使用されているらしい。
 敷地の中はよく手入れされており花が咲き乱れている。
 建物の前まで行くとどうも入り口が閉まっているようで、確認のために裏側にも回ってみても開いている気配がない。
 どうやら今日は開館していないようだが、ガイドブックには休館日は書いてなかったのでちょっと納得がいかない。
 屋敷の裏側にはラブラドールレトリバーがつながれており、退屈そうに寝っ転がっていることから近づいてみると、ちょっと怖そうな外見とは異なりかなり人懐っこい。
 尻尾を振っているので、ちょっとだけ相手をしてからさらに裏手の方に回ってみることにするか。
 
 とりあえずレドールの敷地の外に出ようとすると一台の車が到着し、一人の若い男性が裏口の鍵を開けている。
 このときはてっきり昼休みで閉めていたものと思いこみ、内部の見学が出来るのか聞いてみるとあっさりOKが出たので中に入り入場料を払おうとするが話がかみ合わない。
 よくよく聞いてみると明日、女王がやってくるため見学は行っていないのだがこの人が特別に案内してくれるとのことだ。
 掃除のたぐいが終わっているので、入口のホールで靴を脱いで素足で見学することとなるが、靴下に穴でも開いていたら恥ずかしいなと思いいつつ自分の靴下をチェックすると開いてないので安堵する。
 視線をずらして案内してくれた男性の足下をちらっと見てみると意外なことに、そちらの方に開いていた。
 この男性正直男の自分が見てもかなりの男前だと感心していたが、靴下に穴が開いていたのが正直惜しいけどちょっとだけ親近感を覚える。

 説明を聞いてみると明日は女王の誕生日で、いつも誕生日はこちらの屋敷で過ごすことになっているようだ。
 屋敷の内部を隅々まで案内してもらうが、この男性は家具についてやたら詳しい。
 説明してもらった限りではイギリスの古い家具を多いようで、ほとんどがイギリス製のようだ。
 最初に上がった2階はリビングになっているようで、備え付けられているソファで明日女王がインタビューを受けることなどを聞いたり、部屋のデザインの関係でシンメトリーに配置された扉の一つがダミーで、開けると裏はレンガの壁などになっているなど、ちょっと変わったところまで見せてもらう。
 1階は寝室がいくつかあり、ベッドなどを見せてもらうと今の王様はとても身長が高くて昔のベッドを切り継いで大きくしてあることなどを教えてもらう。
 王様の寝室には昔の便器が家具の一部として備え付けられているが、ちょっとふざけて今でも使っているのかと聞いたら、当然使っておらず奥には現在使用しているバスルームとトイレが有るのでそちらまで見せてもらえた。
 見学中は内部の写真を撮りたいとも思ったが、非公開の時に特別に案内してくれていることだし、写真を撮ると案内してくれた男性に迷惑が掛かるかも知れないので今回は自重して一切写真を撮らないことにしておこう。

 最後に何度もお礼を言って屋敷を後にするが、案内してくれた男性も用が済んだようですぐに立ち去ってしまった。
 本来見学できないところを特別に案内してもらえて非常にラッキーだったし、普段の公開時には入れないところまで見られたようなので、案内してくれた男性には感謝の気持ちで一杯だ。
 屋敷を後にしながら、妻と案内してくれた男性がかなりの男前であったことや、王室関連のお役人らしいのではとしばらく話しながら歩いていく。
 妻の方は今回特別に案内してもらえたことで、ノルウェーに対する好感度がかなり上がったようだ。 
 レドールを後にすると、向かい側に立つブライダブリックのほうに移動する。
 こちらも富豪の邸宅と言うことなのだが、思ったよりもこじんまりしており、大富豪の邸宅という感じではない。
 ブライダブリックの方を適当に見学したら、本日の見学は終了なので一度ホテルの方に戻ることにしよう。

 ホテルに向かう途中で昨日対応してくれた眉間に縦皺のあるホテルスタッフが仕事帰りで歩いているのを見かける。
 仕事以外の時も深い縦皺があり、いつも怒っているような表情をしているのだろうかと妻と話しながらホテルに向かう。
 ホテルには16時前に到着だが、このまま部屋に引きこもるには早すぎる。
 特に宛もないことから、別行動にさせてもらい、私は駅で撮影、妻はウィンドウショッピングをする事にして別れる。

 駅はホテルから歩いて5、6分で到着だが、日曜のため運行されている列車が少ない。
 ホームで写真を撮るにしても上を道路が走っている関係で光線具合は最悪だ。
 撮影する被写体も少ないし、時刻表を見ながら何駅か乗れないか調べてみると、17時11分発の列車があるようだ。
 折り返しの列車を考えると40分ほど乗ったナルボーと言うところで折り返すのが妥当なようだが、戻ってくると19時前になってしまう。
 妻には18時にはホテルに戻ると言っておいたが、1時間遅くなってしまうなあ。
 今から遅くなることを伝えるのは難しいし、あとで謝ることとしてとりあえず行ってみることにするか。
 券売機での買い方がよくわからないので、窓口で往復券を購入してホームに向かうとなにやらやたら乗客が多い。
 普段はホームに入るのに改札などないのに、ここでは係員がチェックしている。
 意外と切符を持っていない人が多いようで、改札で発券していてなかなか行列が進まないが、発車10分前には中にはいることが出来た。
 車両の方は最近導入されているBM72系電車で、連接車なのだがちょっと変わった台車を履いている。
 連接台車は2本の車軸が変わったリンクで結合されており、その様子から自己操舵台車ではないかと推測され、どのような乗り心地なのかと気になるところだ。
 車内は満席で、改札がなかなか終わらないようで、5分ほど遅れての出発となる。
 やたらと小学生くらいの子供が多いが、今日は何か特別な日なのだろうか思っていたら、途中のスタジアムでサッカーの試合が有るようで、最寄り駅で大量の人が降りてしまい、いきなり閑散となってしまった。
 さて気になる乗り心地の方は特に変わった様子も無く、特に体感上わかるような特徴は感じられなかった。
 列車は出発時の遅れを引きずっており、途中複線化工事の徐行の関係でさらに遅れが増大しているようだ。
 ナルボーでの折り返し時間は20分あるし、単線区間だから先に出発してしまうことはないだろうと思っていたら、いつの間にか眠ってしまったようだ。
 途中で居眠りをしてしまい、気が付くとどこかの駅に停車中だ。
 時間を見てみるとナルボーの到着時刻になっており、駅名が確認できないがあわてて下車すると、そこは手前のブリーネ駅だった。
 ちょっと失敗したと思いつつ、予想以上に列車が遅れていたのでナルボーでの折り返しは難しかったかもと納得する。
 折り返し列車の到着時刻までは30分有るので駅前に出てみたりするが、コンビニが有る程度で特に変わった様子はない。
 
 しばらく構内をブラブラしながら予定通りやってきた折り返し列車でスタバンゲルに引き返す。
 今度は最後まで起きていたが、意外と沿線風景は近代的で、ベルゲンのフィヨルドのように景色がきれいな訳でもない。

 19時前にスタバンゲルに到着すると、向かい側のホ−ムにクリスチャンサン行きのシグネイチャーが停車している。
 オスロでも撮影していたが、列車を撮るのはこれが最後になるだろうとカメラを向けたとたん、背後から妻の怒った声がする。
 心臓が口から飛び出すほど驚いたが、あわてて振り返ると時間通りに帰ってこないので心配して探しに来た妻が立っている。
 ホテルに帰りながら遅れた言い訳を考えるつもりでおり、この時はまだ心の準備が出来ていなかったため、想定外の事態に思いっきり狼狽してしまう。
 なんとかこの場を取り繕わなければと思いつつ、情けないことに口がパクパクするだけでうまく言い訳できない。
 とりあえずホテルに向かって歩き出すが、このときの私は悪さをして首根っこを摘まれた猫の様な心境だ。
 お説教を受けて小さくなりながらホテルまで歩いていくが、夕食の買い出しもしなければならないのでコンビニを探してしばらくうろつくことになる。
 
 マーケット広場の裏手にあるセブンイレブンでテイクアウトの焼きそばとカルボナーラがあったので、それを購入してホテルに帰るが、妻の方はなかなか機嫌が直らない。
 なんとか精神的に復活し、逆切れしようかと思い始めた頃に一応許してもらい一件落着となるが、これでしばらくは頭が上がりそうに無いなあ。
 ホテルで夕食をすますと、明日のプレーケストーレンへの準備をして、登山に備えて早めに休むことにしよう。
 今日は自業自得とは言え最後の最後で本当に疲れたな。