2015年 9月15日 シベリア鉄道乗車2日目


移動区間 ベース図面出典 Wikitrave

 本日の起床はモスクワ時間0:15頃(現地時間6:15頃)。
 タイムゾーンをまたいだので、時差が1時間進みモスクワ時間+6時間となる。
 車窓には朝霧が広がっており、結構寒そうな雰囲気だが、天気は快晴だ。
 キロポストを確認すると8034kmを通過していた。
 この分ならもうすぐ8000kmのキロポストが撮影できそう。

 昨夜はぐっすり眠ったようで特に途中で目が覚めるようなこともなかった。
 途中、駅に停車していたようだが相変わらず同室の人はおらず、1人で貸し切り状態だ。

 朝食は昨夜のメニューからマッシュポテトを抜いたメニューで、黒パンにスープ、ピクルスで簡単に済ます。

 シベリア鉄道は大平原を進んでいくものと思っていたが、以外と起伏がある地形でGPSのログを見てみると昨夜の内に標高400mくらいの峠を越えていたようだ。
 ハバロフスクの辺りでも標高数十mだったから結構な山岳地帯を通過していたみたい。
 下り線を見ていると保線用の事業用車両が3編成連続で通過していく。
 大規模な保線作業を実施中のようで対向列車が全く通過しない。

 短時間停車のБУРЕЯ(ブレヤ)駅を出発してしばらくしたら8000kmのキロポストなので、撮影するがキロポストが配置されている下り線側を走っている関係で目安にしている100m毎のキロポストが見えにくく、ピッタリのタイミングで8000kmのキロポストを撮影するのは難しかったが何とか撮影に成功。
 ブレヤからずっと上り坂だったので、多少周囲の紅葉が進んだように見える。 

БЕЛОГОРСК(ベロゴリスク) モスクワ起点 7835km(営業キロ)


 本日初の長時間停車はБЕЛОГОРСК(ベロゴリスク)駅で、ほぼ定刻の2:50(現地時刻8:50)に到着。
 駅到着の直前、ポールの上にタンクがのせられた不思議な施設が見られた。
 このときは何の施設か分からなかったが、他の駅で下にタンク車が止められていたことから石油関連の積み込み施設のようだ。

 街自体は余り大きく無さそうだが、機関車の辺りで動きがあるようなので確認に行くと、先頭の機関車は解放されて引上て行ってしまっている。
 ここで機関車交換をするようだと思いしばらく先頭の辺りで待っていると、交代で運用に付くのは同型機のЭП1(EP1)だった。
 てっきり電化方式が変わるのかと思ったが、ウラジオストクからほぼ丸1日走り続けているので、担当範囲が変わるために交換するのだろう。
 交換したのが同型の機関車なので、まだしばらく交流電化区間が続くようだ。
 停車中のロシア号の客車の方でも、打音検査が行われており、てっきり検査は車掌の業務かと思っていたが、構内に常駐している車両部門の係員が行っていた。
 
 機関車交換が終わったので駅前に出てみるが、ここは運転上の拠点の様で駅前広場なども余り広くはない。
 構外にでると乗客を目当てに地元の人が食料品を売りに来ているものの、駅敷地内での販売は規制されているようでフェンスの外で商売をしていた。

БЕЛОГОРСК(ベロゴリスク)駅舎外観(ホーム側)

交換のため連結作業中のЭП1(EP1)

БЕЛОГОРСК(ベロゴリスク)駅舎外観(駅広場側)

БЕЛОГОРСК(ベロゴリスク)駅構内(東側)

БЕЛОГОРСК(ベロゴリスク)駅構内(西側)

7号車(一等車)の乗客達と車掌さん

 駅前から自分の車両に戻ると7号車の乗客もみんな降りてきている。
 同じ車両のロシア人に話しかけられるが、ロシアがしか話せないので意思疎通はかなり難しい。
 しかしこの時のロシア人は政治的な話題を持ち出してきており、アメリカは最低、ロシア最高などと話しているのは分かる。
 日本もロシア側になるべきだみたいなことを言い出しており、そんな政治的な挑発には乗る訳にはいかないので、言葉が分からない振りをして適当にあしらっておく。
 こんなアウェーの状態でやばそうな話題を持ち出されても正直困るし。

 相変わらず欧米人の男性は発車時刻が近づいてきているのにどこかに行こうとして車掌さんに怒られており、全く進歩がないというか、懲りないなというのが正直な感想だ。
 車掌さんに催促されて発車5分前には全員車内に戻る。
 

ゼヤ川、遠くの鉄橋は下り線

ゼヤ川

 БЕЛОГОРСК(ベロゴリスク)駅を定時で発車してしばらくすると下り線が大きく離れて行き、アムール川の支流でこの辺りではかなり大きな川幅のゼヤ川を通過するが下り線の鉄橋はかなり先で横断している。
 何でこんなに上下線を離しているのかよく分からないが、攻撃目標として空爆された際に線路が近いと上下線とも同時に破壊される事を防ぐための軍事上の理由ではないかと推測するものの、その他の橋はそこまで離れていないから意外と単純な理由かもしれない。

СВОБОДНЫЙ(スボードヌイ)駅

7777kmキロポスト

 БЕЛОГОРСК(ベロゴリスク)の次の長時間停車はМАГДАГАЧИ(マグダカチィ)で到着まで4時間ほどかかる。
  途中短時間停車のСВОБОДНЫЙ(スボードヌイ)駅に定刻で到着、出発となるのでこれほどの長距離路線なのに定時運行を行っているロシアの列車運行管理に感心する。
 СВОБОДНЫЙ(スボードヌイ)を出発してしばらくすると7777kmキロポストなのでぞろ目のキロポストであることから撮影しておく。
 結構線路は曲がりくねって敷設されてるるので時たま進行方向の線路が窓から見えるが、СВОБОДНЫЙ(スボードヌイ)を出発してからずっと上り坂を進んでいるように見える。
 時たまカーブで減速するようだが、それなりに速度はでており基本80km/h程度をキープしており、ちょっと長い直線だと100km/h以上の速度で走るようだ。
 

正体不明の気動車

不気味な白樺の林

サービスの昼食

ТЫГДА(ティグダ)駅

 途中の駅では正体不明の車体中間がハイデッカー構造となった気動車と遭遇。
 ただし階下にはシャッターやら機械室のようになっている部分があることや、旅客用の乗降ドアが見られないことから事業用車両の様だ。
 その後もレール運搬車などがすぐそばに止まっていたことから保線作業用の車両なのだろう。

 沿線では白樺の林だったところが枯れたのか、山火事なのか幹の下側を残して無くなっているという奇妙な風景に出くわす。
 同じ風景が他でもたまに見られたことから、何んらかの理由で人為的に伐採されたのかもしれない。

 時間の方はそろそろ現地時間でお昼過ぎになるので、食事はどうしようか思っていたら、昨日やってきたブロンドの食堂車スタッフが昼食を出していいか聞きに来た。
 これ幸いと昼食は運賃に含まれるサービス分で済ませてもらう。
 
 料理のはわざわざ運んできてくれるようで、メニューはライスに豚肉の煮込み料理とコーンの付け合わせ、トマトサラダにパンといった内容だ。
 飲み物はミネラルウォーターに桃のジュースと付いてくる。
 さらに朝食用のセットらしき菓子パンと紅茶、チョコレートが配置パッケージも置いていってくれた。
 食事を終えてしばらくすると食器を下げに来てくれるので想像以上にサービスがいいことに感心する。

 食後しばらくして停車したのは、ТЫГДА(ティグダ)駅でここでも2分の短時間停車で出発していく。
 この頃になると日本で多少キリル文字を覚えてきた成果もあり、駅名くらいならスラスラといえるほどではないが、普通に読めるようにはなっていた。
 次の長時間停車はМАГДАГАЧИ(マグダガチィ)駅まであと1時間くらいで到着だ。

МАГДАГАЧИ(マグダガチィ)駅構内

МАГДАГАЧИ(マグダガチィ)駅構内

 МАГДАГАЧИ(マグダガチィ)駅 モスクワ起点 7463km(営業キロ)

 本日2回目の長時間停車駅のМАГДАГАЧИ(マグダガチィ)駅には定刻の8:25(現地時間14:25)に到着。
 ここも運転上の拠点駅といった感じの駅だが、15分停車なので機関車の交換は無い模様。
 駅の西側には機関区が併設それているようだが、余り車両に動きはない。
 構内の跨線橋から適当に写真を撮ってたら自分の車両の前に戻り出発まで喫煙タイムとさせてもらう。
 この辺になると車掌さんも各乗客の行動パターンを把握してきたようで、いつも出発10分前には車両前に戻って来ている私は大丈夫と判断されたようで、この後も特に注意を受けることはなかった。
 しかしながら欧米人男性の方は相も変わらず出発間際までどこかに行こうとするので、どの駅でも車掌さんにここにいろ!!とジェッスチャーと文句をもらっていた。
 
 МАГДАГАЧИ(マグダガチィ)で本日日中の長時間停車駅は終了となる。
 今日は日中の長時間停車が2駅しか無く、その内1駅は15分停車と余り列車から降りる機会に恵まれない日だった。

 途中眠くなったのでちょっと昼寝するが、ベットを引き出すほどではないので座席のまま横になる。
 起床後スマホをいじっていたらなぜかデータ通信が行えなくなっている。
 やたらとショートメッセージが届くので、確認してみるとロシア語ながらなにやら残高が足らないような表記となっている。
 一応ネットでつながるのは電話会社メガフォンのホームページだけで、残高が10ルーブル以下になっている。
 ウラジオストクでSIMカードを購入する際に3Gパイトまで使い放題のプランでお願いしていたが、どうもうまく登録されていなかったらしい。
 仕方ないのでメガフォンのホームページからクレジットカードでチャージ出来そうなのでトライしてみたが、うまくチャージされない。
 何どもトライするとおかしな事になりそうなので、すっぱりとネット接続についてはあきらめることにしよう。
 メールが出来なくても特に問題ないし、妻との連絡用の国際通話カードの方はちゃんと機能しているので、特に困ることはない。
 スマホの地図についてもオフラインマップを用意しているので、グーグルマップが使えなくても大丈夫だし、多少衛星を捕捉するのに時間が掛かる程度なので実害はない。 

СКОВОРОДИН(スコボロディン)付近で夕暮れ

夕食のロシア製カップ麺

 少し日が傾いてきた10:30(現地時間16:30)駅に停車したので、短時間停車のСКОВОРОДИН(スコボロディン)駅かと思ったら、到着まではまだ1時間ある。
 停車しているのがあまりにも小さい山間の駅なので、何かの運転停車か?と思っていたら隣を旅客列車が追い抜いていった。
 こちらは特急相当なのに何で抜かれるの?としばらく不思議に思っていたら動き出したので、恐らく短距離列車の遅れ回復のための処置では無いかと想像したが、わざわざこちらを止めるほどの必要性も考えられないし、正規のダイヤ上の事なのか判断が付かない。

 次の停車駅СКОВОРОДИН(スコボロディン)には運転停車が響いたのか10分遅れで11:40(現地時刻17:40)頃到着。
 7号車のロシア人乗客が1名降車するので、欧米人夫妻とともにデッキで見送る。
 隣のホームには接続列車が停車しており、ひょっとすると先ほど抜いていった列車だったのかもしれない。
 短時間停車なので乗客の乗降が済むとすぐに出発となる。
 
 こちらはそろそろ夕食ということで、ウラジオストクで購入したカップ麺で晩餐とさせてもらおう。
 一応パッケージから牛肉味と想像していたが、コーンビーフ風味の普通のカップ麺だった。
 ただちょっと臭いがきついのか室内がかなりコーンビーフ臭くなるのが欠点であろうか。

 カップ麺を食べていたら、ドアをノックされたので何も考えずに開けると昨日の車掌2人組が再度アイスの車販に来ていた。
 一瞬やり手婆の目が光ったように見え、金ズルとしてロックオンされたと直感的に感じ取れた。
 ただしこちらも昨日のやり取りからボリボリ価格のアイスなどいらないので、食事中だからいらないと断るが、なにやら雰囲気としてはデザートにはアイスが最高よというような事を言いながら、招いてもいないのに部屋に入ってくる。
 こちらは買う気が全くないので、ロシア語のいいえ、Het(ニェット)を10回くらい言い続けてるが座席に陣取ったやり手婆もなかなかしつこい。
 しばらく押し問答というか私はHet(ニェット)しか言っていないのだが、あきらめたようで隣の部屋に移っていた。
 なかなか厳しい戦いであったが、何とか押し返し改めて食事を続けさせてもらう。
 さすがに問答中にラーメンが伸びるようなオチは付かなかった。

 次は長時間停車のЕрофей Павлович(エロフェイ・パヴロヴィチ)だが、到着までは3時間以上ある。
 薄暗くなった車窓を見ていると対向列車の貨物が渋滞しているようで、3列車が非常に短い間隔で下り線上に止まっていた。
 そこから5分もしないうちに今度はこちらが運転停車となってしまい5分ほど停車する。
 再度動き出すとなにやら分岐器のメンテを行っているようで、下り線側は完全に線路閉鎖してしているようで線路上に進入禁止と思われる看板を立てられていた。
  
 車掌室の方でも夕食の準備を始めてた様で電子レンジの音が聞こえてくる。
 大分車内が暗くなったかなという辺りでやっと車内に照明が入る。

 14:00(現地時刻20:00)頃、車掌さんが車内清掃に回ってきて、廊下と室内に掃除機を掛けてもらう。
 基本的にゴミ散らかさないようにしているが、バンクズなどが落ちてしまうので、掃除をしてもらうと足下がすっきりした感じがする。

Ерофей Павлович
(エロフェイ・パヴロヴィチ) モスクワ起点 7081km(営業キロ)


 本日最後の停車駅で、停車時間は21分だが、3分遅れで15:09(現地時刻21:09)到着。
 多少遅れてはいるが停車時間の調整で取り戻せそうだ。
 駅の手前の区間は地図で見ると山岳区間のようで、Ωループが複数有ったり、とにかく線路が曲がりくねった地形だったようだ。
 ただ暗くて余り全体像はつかめなかったが、部屋の窓から機関車のライトが照らす線路がたまに見えるたので、かなりの急カーブ区間だったことは伺えた。
 就寝前にGPSのログを見てみたところ、この辺りは標高が700m程度とかなり高いところを走っており、今日はずっと坂を上って来ているように見えたのはこのためだったかと納得する。

 車掌さんは夜の担当に交代しており、外に出るとホームのない線に止まっており、直接線路上に降りる。
 駅自体は周囲に余り明かりもなく、構内も薄暗い。
 山岳区間を抜けたためか、車両点検で打音検査をしており、あちこちでカン、カン、ポコンと音がこだまする。
 一応構内のキオスクは営業しているようだが、余り買っている人はいないようだ。
 遅れて到着しているので停車時間が短くなっており、自分の車両の周りの写真を撮ったらさっさと車両に戻る。
 出発は5分遅れで、15:32(現地時間21:32)であった。

 今日も同室の人は来なかったが、明日辺りはそろそろ来そうな予感がする。
 部屋で自炊した電子書籍を読んでいると、夜担当の車掌さんが心配そうな顔で部屋を覗きに来た。
 何事かと思ったら入り口脇にある車掌さんを呼ぶためのポタンに壁に掛けていた鞄が当たってしまっていたようで、何か問題が有って呼ばれたものと思ったらしい。
 とりあえず謝罪して、鞄の位置を変更しておく。
 その後は部屋を暗くして星空を眺めながらかすかに見える車窓に目をこらし、適当にところで眠くなったのでベッドに潜り込むのだった。
 しかし乗車してもう2日になるのに、全く飽きる気配がない。
 列車の中で生活するというのもなかなか新鮮な体験だ。